家庭菜園を始めて最初の年に育てたのは、九条ねぎとキュウリだった。どちらも今でも毎年作り続けている、お気に入りの野菜だ。
引っ越してきた夏に草刈りをして畝を作り、ホームセンターで苗を買ってきた。ミニトマト、九条ねぎ、玉ねぎ、そしてキュウリ。何種類か植えた中で、最初に「できた」とうれしくなったのはキュウリだった。でも話は、九条ねぎから始まる。
九条ねぎは30本の苗から
九条ねぎはねぎの一種で、使い勝手がよく初心者でも育てやすいと聞いていた。まずは苗を30本買ってきて植えることにした。
植えてからしばらくは「ちゃんと根付いてるかな」と毎日様子を見ていた。でもねぎというのは思ったよりたくましい。水をやって待っていれば、それほど手がかからないまま少しずつ育っていった。葉が伸びてきたときは素直にうれしかった。
九条ねぎが育ち始めてから、うちの食卓が変わった。味噌汁に刻んで入れる、酢味噌和えにする、炒め物に使う。何かと言えばねぎを使うようになって、気づいたら毎日の食事にねぎがないことがなくなっていた。自分で育てたねぎを朝の味噌汁に浮かべる。その小さなことがじんわりとうれしかった。
今でも九条ねぎは毎年育てていて、毎日の食卓に欠かせないものになっている。30本から始めて正解だったと思う。あれだけあっても、日々使っているとあっという間になくなる。
ねぎは収穫した後も根を残しておけばまた生えてくる。一度植えれば長く付き合える野菜だと知ったのも、この九条ねぎを育てたことで気づいた。手間がかからず、毎日使える。初めての野菜としてこれ以上ないくらいちょうどよかったと思っている。
キュウリはなかなか実がならなかった
一方、キュウリは待ちの時間が長かった。
植えた場所は日当たりのいい畑の端にした。ネットを張って支柱を立てて、準備はしたのだが、なかなかつるが思うように伸びなかった。最初の頃は「こんなペースで育つのか」と少し心配した。
苗を植えてから、なかなか実がつかない。つるが伸びて、花が咲いて、「そろそろかな」と思っても実がつかない日が続いた。毎日畑を覗きながら、やきもきした。「キュウリって難しいのかな」と少し不安にもなった。
それがある日突然、小さな実がひとつついていた。
「できてる!」と思わず声が出た。その一本が出てきたら、あとはどんどん続いた。一本できると次の日にはまた別のところに実がついている。それが段々と大きくなっていくのを毎日確認するのが、何とも言えないワクワク感だった。キュウリは待つ間はやきもきするけど、一度なり始めたらどんどん出てくる。そのギャップが面白かった。
星型とハート型のキュウリを作った
キュウリが続けてできるようになった頃、ホームセンターでおもしろいものを見つけた。
星型とハート型のキュウリを作れる型枠だ。「こんなものあるんだ」と思って、つい買ってしまった。まだ小さい実が育ってくる途中でその型枠をはめておくと、その形に育つという仕組みだ。
実際にやってみたら、ちゃんと星型のキュウリとハート型のキュウリができた。
型枠をはめてから数日後、確認しに行くたびに形が変わっていく。最初は小さかったのが、日に日に型の中でしっかりと育っていくのがわかる。「本当になるのかな」と思っていたから、完成したときは想像以上だった。
緑色の星形のキュウリ。思っていた以上に形がくっきりしていて、思わず笑ってしまった。しばらく眺めてから収穫して、サラダにして食べた。浅漬けにするのもよかった。普通のキュウリと味は変わらないのに、形だけでなんだか特別感がある。ハート型の方は少し丸みが出て、これもなかなかよかった。家庭菜園だから、こういう遊びができる。買ってきた野菜ではできないことだと思う。
キュウリは自分で収穫したものをサラダや浅漬けにして食べた。自分で育てたものはやっぱりおいしく感じる。味がどうこうというより、育てた手間と時間が一緒についてくる気がして、それがうれしいのだと思う。
野菜が育つことのうれしさ
九条ねぎとキュウリ。最初の年に育てた中でも、この2つは特に印象に残っている。
ねぎは扱いやすく、毎日使えるものが育つ喜びを教えてくれた。キュウリはなかなか実がつかないやきもきを経験して、できたときの達成感を教えてくれた。そして型枠で星型にするという、ちょっとした遊びも教えてくれた。
毎日の食卓に自分が育てたものが並ぶ。ねぎが味噌汁に入っている。キュウリが浅漬けになっている。小さなことだけど、それがうれしくて、だから毎年また畑に出る。家庭菜園の面白さはそういうところにあると思う。
次の年も九条ねぎは植えた。キュウリも作った。型枠も引き続き使った。始まりはいつも、前の年に育てた野菜がおいしかった、というその一点だった気がする。ホームセンターの園芸コーナーで型枠を見かけるたびに、あの最初の星型キュウリのことを思い出す。


コメント